こんにちは!
普段はホラー作品にどっぷり浸かっている、30代前半の独身男です。
今日は、最近インターネットや書店でひときわ存在感を放っているあの作品について、僕なりの感想を交えながら、皆さんの知りたいあれこれを深掘りしていこうと思います。
そう、『近畿地方のある場所について』です。
Googleで検索してたどり着いたあなた、もしかして読み始めてしまって、そのあまりの怖さに続きが読めなくなっていませんか?
大丈夫、ここを読めば、その正体と怖さの秘密がきっとわかるはずです。
『近畿地方のある場所について』解説・どんな話?
まず、この作品がどんな物語なのか、簡単にご紹介しますね。
主人公の「私」はライターで、友人でありオカルト雑誌の編集者である小沢くんが消息を絶ったところから物語は動き出します。
小沢くんは、ある企画のために過去の雑誌のバックナンバーや資料を調べていたんですが、その中で近畿地方の山奥に点在する、複数の怪異が織りなす恐怖の連鎖に気づいてしまうんです。
彼が目をつけたのは、トンネル、ダム、廃墟といった心霊スポットで起こった、一見バラバラに見える奇妙な事件の数々。
でも、小沢くんはそれらがすべて「近畿地方のある場所」??作中では「●●●●●」と伏せ字で書かれている謎の地域??と深く繋がっていることに気づいていくんです。
彼はその真実を追い求めて現地へと向かい、そのまま行方不明に。
「私」は、小沢くんが見つけてきた膨大な資料、つまり雑誌記事、インタビューの記録、ネット掲示板の書き込み、手紙、そして袋とじの写真などをまとめ、一冊の本として世に出すことにします。
その目的は、もしかしたら小沢くんの行方を知る人がいるかもしれない、という情報提供の呼びかけなんです。
だから、この作品は小説というより、まるで実際の事件をまとめた資料集のような構成になっているんですよ。
読者は、提示される断片的な情報をまるでパズルを解くように繋ぎ合わせながら、この恐ろしい場所の全体像と、そこで何が起きたのかという真実を追体験することになります。
そして、物語が進むにつれて明らかになる真相は、本当に背筋が凍るようなものばかりです。
奈良県の少女失踪事件、林間学校での集団ヒステリー、飛び降り自殺が頻発するマンション、そして「お札屋敷」と呼ばれる場所など、一つ一つの怪異がリアルで、読んでいてどんどん引き込まれてしまうんです。
最終的には、作者自身が怪異に深く関わってしまうことになり、衝撃的な告白で幕を閉じます。
この結末は、あなたを読者であるだけでなく、この物語の「当事者」の一人にしてしまうような、恐ろしい仕掛けが隠されているんです。
近畿地方のある場所について|実話がモデル?元ネタ・場所はどこ?
これがね、多くの人が一番気になるところだと思います。
結論から言っちゃうと、『近畿地方のある場所について』は、フィクション作品なんです。
作者は「実話ではない」と明言しています。
「え、そうなの!?」って思いますよね。
僕も初めて読んだ時は、「これ、本当にあったことなんじゃないか?」って疑って、思わずGoogleマップを開いちゃいましたもん。
まさに作者の狙い通り、手のひらの上で踊らされてたわけです。
この作品は、「モキュメンタリー」という手法を徹底的に用いています。
モキュメンタリーというのは、「mock(模倣する)」と「documentary(ドキュメンタリー)」を組み合わせた造語で、フィクションなのに、まるで実際に起こった出来事のように見せかける作品のことなんです。
読者が「これ、ひょっとして本当のこと?」と感じるほどリアルに描かれていますが、作中に出てくる事件や手紙、袋とじの写真なども、ぜんぶ作者が創作したものなんですよ。
じゃあ、なぜそこまでリアルに感じさせるのかというと、それは作者が読者の恐怖心を最大限に煽ることを意図しているからなんです。
作品中では、「近畿地方のある場所」という具体的な地名をあえて伏せ字にすることで、読者はその場所を特定しようと調べてしまうんです。
そうやって、知らず知らずのうちに物語の世界に深く引き込まれていくわけです。
たとえ読者である僕らが「これは作り話だ」と思っていても、その巧みな演出によって、現実とフィクションの境界が曖昧になり、じわじわと恐怖が心に染み込んでくる。
これがモキュメンタリーの醍醐味であり、この作品が本当に恐ろしい理由の一つなんです。
だから、安心して(?)読んで大丈夫ですよ。呪われたり、怪異に巻き込まれたりする心配は……きっとないはずです、たぶん。
近畿地方のある場所について|何がそんなに怖いの?
さあ、ここが本題です。
フィクションなのにこれほどまでに人を震え上がらせる『近畿地方のある場所について』の怖さの秘密を、僕なりに解説していきますね。
まず、一つ目は「読者を積極的に巻き込む構成」が挙げられます。
先ほども言ったように、「近畿地方のある場所」という曖昧な表現が、読者の好奇心を刺激します。
「え、どこなの、その場所!?」って思って、ついGoogleマップを開いたり、近畿地方に住んでる人なら「もしかしてうちの近所?」なんて考えたりしませんか?
そうやって、読者自らが物語の中に入り込もうとするんです。
最初はただの謎解き感覚だった読書体験が、いつの間にか、自分自身の身に危険が迫っているような、現実味を帯びた恐怖体験へと変わっていく。
この心理操作が本当に巧みなんです。
二つ目の怖さは、「リアリティと悪意の絶妙な融合」です。
作中に登場する怪談や怪事件は、どれも「実際にありそう」と感じさせる描写で溢れています。
例えば、インタビュー記録や手紙の語り口調が、本当にその人が話しているかのようにリアルなんです。
日常で起こりうるような些細な異変が、やがて背後にある悪意の存在へと繋がっていく。
個々の怪談は「意味が分からないけど不思議な話」で、それだけなら現実味があるんですが、それらが複数束ねられることで、怪異の持つ明確な悪意が透けて見えるような仕組みになっているんです。
これまでのホラー作品で培った耐性がどんなに強くても、この作品の「悪意」にはグサッとやられてしまうはずです。
そして、三つ目のポイントは、「徐々に読者に迫りくる恐怖」の演出です。
物語の序盤では、怪異はまるで他人事のように、遠く離れた場所で起こっている事件として語られます。
ところが、ページを読み進めるにつれて、その怪異は作者の知人、そして作者自身へと、まるで足音を立てるように近づいてくるんです。
この構成が、読者にも「次は自分に危険が迫ってくるんじゃないか!?」という錯覚を与え、恐怖心を倍増させます。
僕も読みながら「ああ、これは次は俺の番だな」って、もう逃れられないような感覚に陥りましたよ。
さらに、四つ目は「現代社会への適応」が素晴らしいです。
インターネット掲示板の書き込み、SNSへの投稿、YouTubeの実況動画など、現代のデジタル空間を積極的に取り入れています。
怪異がデジタルの世界にも侵食してくるという設定は、情報が瞬く間に拡散される現代において、より身近で、逃れることのできない恐怖を描き出しているんです。
もはやどこにいても安全ではない、そんな不安を掻き立てられます。
最後に、この作品の大きな特徴として、「読者の考察意欲を刺激する仕掛け」があります。
「近畿地方のある場所」の正体や、怪異の目的が最後まで明確にされないなど、多くの謎や伏線が残されています。
これにより、読者は自分自身で物語を解釈し、考察しようとします。
そして、ネット上では活発な考察が共有されていて、他の読者の意見を参考にしながら、自分なりの解釈を深めることができるんです。
僕も読み終わった後、すぐにネットで考察を調べまくりましたね。
そうやって、作品への没入感が深まり、恐怖体験がさらに個人的なものになるというわけです。
これらの要素が渾然一体となって、『近畿地方のある場所について』は、読者に強い恐怖と不安感を与えることに成功した、モキュメンタリーホラーの傑作と言えるでしょう。
近畿地方のある場所について|読後にゾクッとしたいならこのモキュメンタリーもおすすめ!
『近畿地方のある場所について』を読んで、モキュメンタリーホラーの魅力にどっぷりハマってしまったあなたに、僕がおすすめする作品をいくつか紹介しますね。
小説で言えば、まずは小野不由美さんの『残穢』は外せません。
引っ越し先の部屋で聞こえる奇妙な物音や気配が、やがてその土地に潜む怨念へと繋がっていくんですが、これが本当に淡々とした語り口で、じわじわと現実に侵食してくるような怖さがあります。
雨穴さんの『変な家』も、ぜひ読んでほしい一冊です。
間取り図に隠された奇妙な違和感から、恐ろしい真実が明らかになっていくミステリーホラーで、YouTube動画とも連動していて、新しい時代の怖さを感じさせてくれます。
同じ雨穴さんの『変な絵』も、9枚の奇妙な絵に秘められた真実を解き明かしていく作品で、緻密な伏線回収が光ります。
梨さんの『かわいそ笑』は、インターネット上に流布する怪談を追っていくうちに、恐怖が現実とリンクしていく感覚がたまらない作品です。
読者参加型のような没入感が魅力で、僕も読み終わった後、この世のすべてが怖くなりました。
芦沢央さんの『火のないところに煙は』は、ミステリー要素が強く、怪談が単なる怖い話では終わらない、深い人間ドラマが展開されるので、読み応えがあります。
映像作品も良いものがたくさんありますよ。
モキュメンタリーホラーの金字塔ともいえるのが、映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』ですね。
森で消息を絶った学生たちが遺したビデオ映像という設定で、これぞファウンド・フッテージ系の原点、という怖さが詰まっています。
白石晃士監督の『ノロイ』も、日本のモキュメンタリーホラーを語る上では絶対に外せない傑作です。
怪奇実話作家が呪いの連鎖を追うドキュメンタリー風の作品で、テレビ番組の映像や別のカメラ映像など、バラバラに描かれるシーンが最後に一つの邪悪な真実に収束していく様は圧巻の一言です。
最近だと、テレビ東京がモキュメンタリーホラーに力を入れていて、面白い番組がたくさんあります。
例えば、『このテープもってないですか?』は、視聴者から送られてきた昔のビデオテープの中にある、狂気に満ちた映像の数々が、まるでこちら側に染み出してくるような感覚を味わわせてくれます。
Aマッソが出演していた『Aマッソのがんばれ奥様っソ!』は、一見普通のドキュメンタリーバラエティなのに、登場人物たちが抱える闇がじわじわと見えてきて、視聴者だけがその違和感に気づくという、なんとも胸糞な面白さがありました。
あと、最近の話題作では、『イシナガキクエを探しています』もおすすめです。
公開捜査番組という体裁で、視聴者が実際に電話をかけられるというリアルタイム感も相まって、これまでのモキュメンタリーホラーの面白さを凝縮したような作品でした。
YouTubeチャンネルの『フェイクドキュメンタリーQ』も、短く濃密なモキュメンタリー作品を多数公開しているので、手軽にゾクゾクしたい方にはぴったりですよ。
まとめ
モキュメンタリー作品は、フィクションと現実の境目を曖昧にする、その「嘘っぽさ」が一番の魅力であり、恐怖を増幅させる要素です。
今回紹介した作品以外にも、まだまだたくさんの傑作があります。
ぜひ、あなたのお気に入りの「恐ろしい場所」を見つけて、その世界にどっぷり浸かってみてください。
それでは、またどこかの怪談でお会いしましょう。