津波警報が発表されて、不安を感じている方もいらっしゃるかもしれませんね。
特に「3m」という数字を聞くと、「大したことないのでは?」と思ってしまう気持ち、よくわかります。
結論から言うと、高さ3mの津波警報が発令された場合、速やかに安全な場所に批難をしてください!
大切な命を守るために、絶対に避難するようにしてください!!
■目次
高さ3mの津波はどれくらい?
「たかが3m」が命を奪う現実に
「3mの津波」と聞くと、多くの人は「東日本大震災のときのような壊滅的な被害にはならないだろう」と考えがちです。
しかし、これこそが最も危険な落とし穴かもしれません。
実は、東日本大震災の際、仙台平野の海岸沿いに到達した津波の多くは、まさにこの「3m程度」だったと報告されています。
にもかかわらず、その被害は甚大なものでした。
海岸沿いの防砂林は根元からなぎ倒され、仙台港の工場付近では鉄パイプのガードレールがひしゃげていたそうです。
鉄筋コンクリートの建物は残ったものの、簡易鉄骨の家は1階部分の壁がまるごとなくなり、木造家屋は跡形もなく流されてしまいました。
ほんの数メートルであっても、次から次へと押し寄せる水の勢いは想像を絶するほどものすごいものなのです。
わずか1mの水流でも、人は立っていられず、車さえも流されてしまいます。
三陸で観測された15mや20mといった高い津波のイメージからすると、3mは小さく感じてしまうかもしれませんが、数メートルの津波でも十分に命を脅かすほどの脅威であると認識してください。
木造建築物は水のエネルギーをまともに受け止めきれず、かなりの数が流され、倒壊してしまうでしょう。
鉄骨の建物も骨組みは残っても外壁は破壊されることも考えられます。
鉄筋コンクリート造りの建物であれば形は保たれるかもしれませんが、被害の規模に差はあれど、東日本大震災のような状況になることも十分に考えられます。
特に都市部では、アスファルトで水が流れやすいため、津波は離れた場所まで到達します。
もし火災の原因となる車が多数あり、丈夫な建物に衝突して重なり合えば、1台からの出火が広がり、爆発へとつながる可能性もゼロではありません。
地下鉄のような地下施設は簡単に水没し、利用者の命が危険にさらされたり、火災が発生したりすることも考えられます。
場合によっては、東日本大震災よりもさらにひどい状況になることもあり得るのです。
気象庁が大津波警報の基準を「3m」としているのは、まさにこの高さが大きな被害につながることを意味しているからに他なりません。
決して「たかが3m」と侮らないでください。
津波の正体:見えない速さと驚異のエネルギー
普通の波と津波は、全く異なるものです。
風が水面に作用して波の山が繰り返されるのが「波浪」と呼ばれる普通の波ですが、津波は海底から海面までの海水全体が動く「水の塊」なのです。
この巨大な水の塊が押し寄せるため、その破壊力は圧倒的に異なります。
津波は海が深ければ深いほど速く伝わる性質を持っています。
水深5,000mの沖合では、時速約800kmにも達し、ジェット機並みのスピードです。
それが沿岸に近づき、水深が浅くなるにつれて速度は落ちていきますが、それでも陸地近くでは時速約36km、つまり市街地を走る自動車と同じくらいの速さで押し寄せます。
「津波が見えてから逃げるのでは間に合わない」と言われるのは、そのためです。
津波は、先に来た波が速度を緩める間に、後ろから来る波が追いつき、合体するように高くなっていきます。
この「遡上高」は、海岸の地形によっては波高の数倍にも達することがあり、V字型の湾や岬の先端などでは、2mの波が陸上を駆け上がったときに8mにもなる可能性もあると言われています。
さらに恐ろしいのは、津波は一度で終わらないということです。
「第一波が最大」という考えは間違いで、後から来る第二波や第三波、時にはそれ以降の波が最も高くなることも珍しくありません。
2003年の十勝沖地震では、第一波から約4時間後に最高波を記録した例もあります。
潮位の変化が始まってから最大波が観測されるまでに数時間以上かかることもあり、津波の影響が半日や1日以上続くこともありますから、決して油断はできません。
命を守る行動:津波警報3mからの確実な避難
では、3mの津波警報が出たとき、私たちはどう行動すれば良いのでしょうか。
まず、最も大切な原則はただ一つ、「とにかく逃げる」ことです。
海辺で強い揺れ(震度4程度以上)を感じたり、あるいは弱い揺れでも長くゆっくりとした揺れを感じたら、津波警報の発表を待たずに直ちに海浜から離れ、急いで高台などの安全な場所へ避難してください。
津波警報や津波注意報が発表されたら、海岸や川の河口付近にいる人はすぐに逃げることが必要です。
津波は予想の高さを超えることもありますし、斜面を駆け上がって内陸深くまで流れ込むこともあります。
絶対に立ち止まったり、引き返したりしないでください。
周りの人にも避難を呼びかけながら、一刻も早く、可能な限り高い場所へ逃げましょう。
近くに高台がなければ、頑丈なマンションやビルの上階へ、あるいは海岸から遠く離れた場所を目指してください。
津波からの避難は、基本的に「徒歩」が最も安全な手段です。
車での避難は、渋滞を引き起こしたり、道路の損壊やがれきによって立ち往生したりするリスクがあります。
東日本大震災の際にも、車での避難中に多くの人がこれらの障害に直面しました。
もし、どうしても車での避難が必要な場合は、道路の損壊や信号機の停止、障害物に十分注意し、渋滞などで動けなくなった場合は、ためらわずに車を置いて徒歩で避難を続けてください。
自分の命を守ることを最優先にしましょう。
津波に対する日頃の備え:明日の安心を今日から築く
津波から身を守るためには、日頃からの備えが非常に重要です。
まず、ご自宅や職場、学校周辺で津波の危険がある場所をハザードマップで確認し、浸水範囲や避難場所、避難経路を把握しておきましょう。
海から離れていても、川沿いを遡上してくる津波もありますから、広範囲にわたるリスクをチェックすることが大切です。
避難場所は一ヶ所だけでなく、さらに高い場所にある避難ビルや津波避難タワーなども調べておくと良いでしょう。
そして、実際に避難経路を歩いてみるなど、積極的に防災訓練に参加することも大切です。
いざという時に冷静に行動できるよう、日頃からのシミュレーションが役立ちます。
また、避難場所での生活に最低限必要な非常用持ち出し袋の準備も忘れずに。
現金や預金通帳、ラジオと電池、懐中電灯、水と非常食、救急箱、防寒着や替えの下着などはもちろん、ライターやロウソク、手袋、毛布、ヘルメット、ナイフ、缶切り、インスタントラーメン、哺乳瓶や防災ずきんなども用意しておくと安心です。
これらはいつでも持ち出せる場所に備えておきましょう。
そして、家族との連絡方法も事前に決めておくこと。
災害時は電話回線が混雑する可能性が高いので、災害用伝言ダイヤル(171)や災害用伝言板、SNSの活用方法などを確認し、緊急時の集合場所も明確にしておきましょう。
海水浴場などでは、赤と白の格子模様の「津波フラッグ」が津波警報等の発表を視覚的に伝えています。
もし海岸でこの旗を見かけたら、音が聞こえなくても、すぐに海から上がって高台へ避難してください。
津波警報が解除されるまでは、決して海岸には近づかないでくださいね。
まとめ
「恐れず、忘れず、侮らず」――これは津波防災の大切な心構えです。
私たちは地震大国に住んでいます。
津波の脅威を正しく知り、日頃からできることを準備し、いざという時には躊躇なく命を守る行動をとることが何よりも大切です。
皆さんの安全を心から願っています。