映画『国宝』をご覧になった皆さん、歌舞伎の世界の奥深さや人間ドラマに引き込まれた方も多いのではないでしょうか
特に、登場人物たちの複雑な関係性は、物語をより深く味わう上で気になりますよね
今回は、皆さんが気になっているであろう、春江と俊介、喜久雄と彰子の関係、そして主要な人物たちの相関について、じっくりと掘り下げていきたいと思います
映画を観た僕なりの視点も交えながら、その魅力に迫っていきましょう
国宝(映画)解説|春江(高畑充希)なぜ俊介(横浜流星)を選んだのか?
春江が、長年連れ添った恋人である喜久雄ではなく、俊介を選んだ理由
これは本当に多くの人が「なぜ?」と感じたのではないでしょうか
僕も最初は驚きました
春江と喜久雄は、長崎時代からの深い絆で結ばれていました
互いの背中に対の刺青を入れるほど、一生を誓い合うような関係だったんです
喜久雄を追って大阪まで来た春江は、彼の歌舞伎役者としての成功を心から願い、水商売で稼ぎながら支え続けました
しかし、喜久雄が芸の道に没頭し、その才能を開花させていくにつれて、春江は彼の「芸に全てを捧げる姿」に、どこか置いていかれるような寂しさを感じていたのかもしれません
喜久雄からのプロポーズを春江が断ったのは、自分の存在が彼のスター街道の邪魔になることを恐れたから、あるいは「一番のご贔屓さん」として彼を支えたいという、彼女なりの深い愛情の表現だったという解釈もできます
そんな折、喜久雄の才能に打ちのめされ、心が折れて家を出て行ってしまった俊介が現れます
俊介は、まるで「誰かに支えてほしい」とでも言うかのように弱りきっていました
春江は、そんな俊介の「弱さ」を見て、彼に寄り添う道を選んだんです
喜久雄には「芸」という揺るぎないものがありましたが、俊介は不安定で、彼女の支えを必要としているように見えたのでしょう
映画の中では、俊介が喜久雄と共に春江の店に通ううちに、二人の関係が自然と深まっていった様子も描かれています
俊介が自身の才能のなさに打ちひしがれても、春江は彼の人間性を認め、寄り添うことを選びました
これは単純な「乗り換え」ではなく、喜久雄への愛を根底に持ちながらも、彼とは異なる形で、別の人生を選んだ春江の強い決断だったんだと僕は感じました
「救える人を救う」という彼女なりの愛の形だったのかもしれませんね
国宝(映画)解説|喜久雄(吉沢亮)は彰子(森七菜)を愛していたのか?
喜久雄と彰子の関係も、映画を観ていて複雑に感じた部分です
彰子は、歌舞伎界の重鎮である吾妻千五郎の娘という、特別な血筋の持ち主です
彼女は幼い頃から喜久雄を兄のように慕い、やがて彼に恋心を抱くようになります
しかし、喜久雄が彰子に近づいた背景には、歌舞伎界で後ろ盾を失い、表舞台への復帰を願う「打算」があったのは否めません
権力を持つ彰子の父の力を借りて、再び舞台に立つという目的があったんです
もちろん、それだけで全てを語ることはできません
映画の描写からは、喜久雄にも彰子に対する好意や情があったように見受けられました
ただ、彼の芸への「執着」はあまりにも深く、それ以外の感情が霞んでしまうほどでした
彰子との関係が破綻するシーンは、喜久雄が愛よりも芸を選び、そのために多くのものを犠牲にしてきたことを強く印象づける場面だったと思います
原作では、彰子が喜久雄の個人事務所の社長にまでなり、彼を陰から支える強い女性として描かれています
藤駒や綾乃とも良好な関係を築き、喜久雄を深く理解し信頼していた存在です
映画の描写だけでは、喜久雄が彰子を「愛していた」と断言するのは難しいかもしれません
しかし、少なくとも彼にとって彰子が、芸の道を極める上で重要な存在であったことは間違いありません
彼女は、喜久雄が自身の出自のコンプレックスを乗り越え、歌舞伎の世界の正統性へと近づくための「鏡」のような存在だったのかもしれない、と僕は思います
国宝(映画)|主要人物相関図
『国宝』の物語を彩る主要な人物たちの関係性を整理して見ていきましょう
それぞれの人物が織りなすドラマが、物語の深みを増しています
立花喜久雄 (吉沢亮)
物語の主人公で、任侠の家に生まれた異色の歌舞伎役者です
天賦の才を持ち、努力と執念で人間国宝へと上り詰めます
彼の人生は芸に全てを捧げられ、そのために多くのものを犠牲にしてきました
大垣俊介 (横浜流星)
花井半二郎の息子であり、歌舞伎名門の御曹司です
喜久雄とは兄弟のように育ち、ライバルとして切磋琢磨しますが、その才能に打ちのめされ、一時歌舞伎界から身を引きます
血筋という重圧と自身の才能との間で苦悩する姿が印象的です
花井半二郎 (渡辺謙)
上方歌舞伎の名門・花井家の当主で、喜久雄の師匠であり、引き取り親です
喜久雄の才能を見抜き、自身の代役に指名するなど、彼の人生に大きな影響を与えます
歌舞伎界の伝統と権威を象徴する存在です
小野川万菊 (田中泯)
歌舞伎の女形として人間国宝に認定された、喜久雄と俊介にとってのカリスマです
その言葉一つ一つに重みがあり、喜久雄の芸への深い洞察を与えます
彼の晩年の姿は、芸を極めた者の孤独や、美の呪縛からの解放を示唆しているようでした
福田春江 (高畑充希)
喜久雄の幼馴染であり、初恋の相手です
深い愛情で喜久雄を支えましたが、彼の芸への常軌を逸した没頭に寄り添い続けることができず、最終的に俊介の妻となります
彼女の選択は、愛の形と人生の選択の複雑さを表現していました
彰子 (森七菜)
名門歌舞伎役者・吾妻千五郎の娘で、喜久雄を慕う女性です
喜久雄は彼女を利用しようとしますが、彰子自身も喜久雄への純粋な好意を抱いていました
映画では喜久雄の芸への執着を示す存在として描かれましたが、原作では喜久雄を支える大切な人物として、より深く描かれています
藤駒 (見上愛)
京都の花街で喜久雄と出会う芸妓です
喜久雄の芸に魅了され、彼を献身的に支えようとします
彼女の存在は、芸の道に生きる男が、私生活で多くのものを犠牲にする姿を浮き彫りにしています
綾乃 (瀧内公美)
喜久雄と藤駒(原作では別の芸妓)の娘です
物語の終盤に登場し、父への複雑な感情を抱きながらも、その芸の美しさを認める存在です
過去と現在、そして未来をつなぐ象徴的な役割を果たしています
徳次 (下川恭平)
喜久雄の幼馴染で、裏社会に生きる兄貴分です
映画では登場シーンが少ないですが、原作では喜久雄の人生を影から支え、時に体を張って守る重要な存在です
喜久雄にとって血の繋がらない兄のような存在だったと言えるでしょう
大垣幸子 (寺島しのぶ)
花井半二郎の妻であり、俊介の母です
歌舞伎の家に生きる妻として、血筋と才能の間で葛藤し、息子への深い愛情と喜久雄の才能を巡る複雑な感情を抱いています
彼女のたたずまい一つ一つが、歌舞伎の家の重みを表現していました
最後にまとめ
この壮大な物語は、歌舞伎という特別な世界を舞台にしながらも、普遍的な人間の感情や生き様を問いかけてきます
もし映画を観て、さらに深く作品の世界に触れたいと感じたら、原作小説もぜひ読んでみてください
きっと新たな発見があるはずです